心房細動の持続時間と抗凝固療法

UpToDateの著者らは過去の研究を踏まえる17~24時間以上の持続がある場合には塞栓リスクが高まるがそれ未満の場合にははっきりわからない。
また発作頻度に関する研究は無く影響は不明。
 
ペースメーカーや除細動器を植え込みとなった65歳以上の高血圧既往にあり心房細動の指摘が無い患者。3ヶ月間心電図モニターを行い、無症候性AFを調べた。2.5年間のフォロー期間での塞栓リスクを評価。
 
6分以上AFが持続している場合はそれ未満か無い場合と比べて1.76倍 (hazard ratio [HR] 1.76; 95% CI, 0.99 to 3.11; p = 0.05)
6時間以上AFが持続している場合は、6分未満か無い場合と比べて2.00倍 (HR 2.00; 95% CI, 1.13 to 3.55).
 
フォローアップ研究では無症候性の場合、24時間以上持続した場合にのみ塞栓リスクとなった (adjusted HR 3.24, 95% CI 1.51-6.95) 。
 
② SOS AF project,  TRENDS study.
 
AFの持続時間を5分、1時間、6時間、12時間、23時間で分類、塞栓リスクを評価
1時間以上の持続でリスク増加 (HR 2.11, 95% CI 1.22-3.64)
 
③RATE registry
15~20秒未満の短時間のAT/AFは、AT/AFが全く無い場合に比べて、心不全入院・不整脈脳梗塞TIAリスクを増加させない。

間質性肺炎とANCA関連血管炎

日本では間質性肺炎からMPAへ進展するものが多い
IPの診断は画像診断と病理組織学的検査の組み合わせ
  1. MPAの先行病変または肺に限局した血管炎としてIPがある
  2. IPの経過でANCAが陽性になり血管炎を惹起する
両者は区別できないことが多い
肺限局型は肺以外の臓器障害が無い、肺の場合は病理得にくい問題がある
ANCA陽性IPは20%程度がMPAに進展すると言われている
肺胞出血を伴う例では腎病変もある場合が多い
【参考文献】
見逃すと怖い血管炎

スキンスコア(modified Rondan total skin thickness score MRSS)

皮膚硬化の程度
0 正常皮膚
1 大きくも小さくもつかめる、大きくつまんだ方が皮膚が厚い
2 大きいつまみはできる、小さいつまみはできない
3 大きくも小さくもつまめない
評価する部位
手指・手背・前腕・上腕・大腿・下腿・足背
 
スキンスコアは同じ検者が経時的に繰り返す
3ヶ月に1回程度調べる
  • びまん型 発症後3~5年で増加し低下する
  • 限局型 初診時から低く変化しない
スキンスコアが増加する場合は皮膚硬化や内臓病変が進行する可能性が高い
スキンスコア上昇と腎クリーゼ・腎障害・呼吸器障害の関連が報告されている

関節リウマチの関節外症状

関節炎が重度な場合やRF高値の場合に臓器障害を起こしやすい
ステロイドを使用しない場合でも炎症によるプロスタグランジンやサイトカインでRA自体が骨粗鬆症のリスクになる
治療開始前と1年に1回程度は骨密度を測定する
筋力低下
  1. 原因として次のものがある
  2. 痛みによる廃用性筋力低下
  3. 多発単神経炎による末梢神経障害
  4. Nodular myositis リンパ球と形質細胞浸潤による活動性筋炎
  5. 血管炎 筋力低下と筋痛を生じる
  6. 薬剤性 ステロイドやスタチン
実際には①が最多
皮膚
リウマトイド結節が多い(20~30%)
肘の伸側など圧力のかかる部分にできやすい、他に指や耳
治療は必要ないが疼痛やROM制限あればステロイドの局注
手掌紅斑は多いがレイノー症状はほとんどない
レイノー症状があれば他の病態の合併や診断の再考が必要
血管炎を合併した場合、皮膚症状は多彩
RF陽性の長期罹患患者では関節周囲に非感染性瘻孔を認めることがある

γグロブリン大量静注療法(IVIG)

保険適応
ITP
Guillain-Barré症候群
ステロイド抵抗性筋炎
EGPAの末梢神経障害
CIDPの筋力低下
 
作用機序
  1. Fcγレセプターを介した機序
  2. 補体を介する免疫反応の制御
  3. 抗イディオタイプ抗体による自己抗体の制御
  4. 炎症性サイトカインの制御
  5. T細胞への作用
 
投与量
IVIGに使用するのはFc活性を持っているものだけ
0.2-0.4g/kg/day DIV×5日とされているが添付文書では疾患ごとに投与量決まっている
*JBスクエアに投与量・投与時間シミュレーターがある(https://www.jbpo.or.jp/med/di/simulator/vg/)
例)体重60kg 12g/day
 
副作用
少ない
過敏症として発熱・皮疹
血液粘稠度の増加による塞栓症、
ショック、敗血症、O型患者以外では抗A・B抗体による溶血、AKI、敗血症の誘発
 
禁忌
IgA欠損症 IgAに対する抗体を誘発する、既に抗体があればアレルギー反応がでる
 
メリットは効果が早く出る。
 
各論
ITP
・血小板数増加するが一時的 妊婦の帝王切開前に使うぐらい
・発症7日以内に使用した場合、1回点滴でも効果がある。冠動脈瘤発生を抑制する。
SLE
・SLE+APS患者で血栓症を繰り返す場合に有効であった
その他
IgA腎症、AAV、小児PN、RA、JRA、TTP、赤芽球癆で有効だったとの報告がある
 
【参考文献】
膠原病診療ノート
ヴェノグロブリンIH添付文書
 

 

 
 

関節リウマチのレントゲン

レントゲンの条件
関節リウマチ 両手足2方向(正面・斜位
・無症状でもMTP関節に炎症がある可能性がある
 
脊椎関節炎 胸腰椎2方向・両側仙腸関節または骨盤正面
痛風 両手関節正面・両膝関節正面・骨盤正面+症状がある部位
 
読み方 A-S-B-C-D
A:アライメント
S:軟部組織
B:骨
C:軟骨
D:分布
 
A Alignment
観察のポイント
  1. MCP関節:尺側偏位や脱臼の有無
  2. DIP・PIP・IP:スワンネック変形・ボタン穴変形・母指Z字変形
  3. 手関節:偏位、CPH<0.5、手関節脱臼
  • 母指・小指は手を大きく開くとMCPで偏位して見える
  • 尺側偏位:MCP関節で中手骨頭と指関節が重なって見える
  • スワンネック変形:MCPDIP関節の屈曲とPIP関節の過伸展
  • Z字変形:母指MCP関節の屈曲とIP関節の過伸展
 
RAの手関節所見
  • Carpal height ratio
    • 炎症によりまず手根骨の関節裂隙が狭くなる
    • 手根部の最大の長さと第3中手骨長さの比が0.5以下となることで判定する
  • 舟状骨と月状骨の関節裂隙は通常、橈骨面の中心にあるが尺側偏位する
 
鑑別診断
  • MCP関節で尺側偏位を来す疾患にジャクー関節症がある
  • SLE・リウマチ熱・炎症性腸疾患や悪性腫瘍
  • 周囲の軟部組織の炎症による緩みなので用手的に整復できる
 
S Soft tissue
  1. 軟部組織腫脹
  2. 石灰化
 
  • 滑膜炎の場合は関節周囲に左右対称な軟部組織腫脹を認める
  • 結節(リウマトイド結節・痛風結節)や骨棘は左右非対称
  • 軟部組織の石灰化は強皮症や皮膚筋炎で見られる、靱帯損傷やCKDでも見られる
  • 痛風では三角靭帯に結晶の沈着が見られる
 
B Bone
観察のポイント
  1. 関節周囲の骨密度
  • 通常関節周囲では骨幹部よりも透過性が高い
  • 炎症がある場合は透過性が亢進する。
  • 変形性関節症の場合は骨硬化が目立つ
 
C cartilage
観察のポイント
  1. 関節裂隙の狭小化
  2. 骨びらん・変形
  3. 骨棘
 
  • 辺縁骨びらん:RAに特徴的 滑膜細胞が軟骨で覆われていない骨辺縁を侵食する
  • pencil-in-cap:近位の関節がペンのようにびらん、遠位の関節で骨新生を伴う
  • 関節周囲に毛羽立った骨新生:乾癬性関節炎による腱付着部炎
  • Overhanging edge:正常な骨がびらん部に覆いかぶさる、進行期の痛風
 
D Distribution
観察のポイント
  1. DIP関節に病変があるか
  2. 対称性
 
  • DIP関節の病変は主に変形性関節症と乾癬性関節炎
  • 乾癬性関節炎ではDIP優位なタイプ、RAに類似する多関節炎、少関節炎、SpAと多彩
  • RAでは通常DIP正常
 
【参考文献】
関節リウマチの診方、考え方 Ver3
リウマチ膠原病診療マニュアル