東京都のマッチングと専門医シーリング

特にエビデンスの無い一勤務医の雑感です。

新専門医制度に移行してから初期・後期ともに東京都の人気が高まっているようです。東京都というよりも都心からのアクセスが良い範囲、という表現が正しいかもしれません。シーリングの関係でマイナー科志望や進路を決めていない場合は「出身大学のある地方で初期研修して後期から実家のある首都圏」のようなパターンが取りにくくなってきています。

埼玉や千葉の僻地は逆に基幹病院が少ないので更に人集めに苦労していると聞きました。基幹病院の人気はあまり変わりないですが、これまで見向きもされなかった病院も都内というだけで研修医が集まるようになっています。私の周りでもかなりそれを感じています。数年前まで定員割れが続き国試多浪や人格に問題がある研修医しか集まらなかった病院にやる気がある真面目な方たちが増えてきました。

働き始めると後期研修先の決め方はなんとなくわかってきますが、学生のころは病院選びの基準がわからず悩んでいた記憶があります。

体軸関節型脊椎関節炎でTNF阻害薬の切り替えは有効か?

EULARの若手医師向けコンテンツemmunetから興味がある論文を選んで読んでみます

EMEUNET | What is new

このemmunetってあまり日本では知られてないのかもしれませんがpodcastがあったりJournal Clubあったり便利なんですよね。今日アブストラクトに目を通したのはこちらです。経験は多くないですがTNF阻害薬をスイッチすることたまにありますよね。その時にスイッチに至った理由によって効果に違いが見られるか調べたものです。

 

Effectiveness of switching between TNF inhibitors in patients with axial spondyloarthritis: is the reason to switch relevant?

体軸関節型脊椎関節炎でTNF阻害薬の切り替えは有効か?

背景:axSpAにおいてはじめに使用したTNF阻害薬を中止した理由が2つ目のTNF阻害薬反応性に影響するか
方法ポルトガルのリウマチコホート(Rheumatic Diseases Portuguese Register (ReumaPt))に登録された患者のうち2008年~2018年の間で1つ目のTNF阻害薬を開始したが中止して2つ目が開始されたものが組み入れられた。治療反応はASDAS-CII, ASDAS-MI, ASDAS-LDA, ASDAS-IDで評価された。最初のTNF阻害薬中止の理由はASDAS-CIIに基づき一時無効・二次無効・副作用・その他に分けられた。はじめのTNF阻害薬中止の理由と2つ目への反応はGEEモデルによって解析された。
結果:193人が組み入れられた。ASDAS-CIIではTNF阻害薬中止の理由は2つ目の効果に影響しなかった。しかし、より厳しい基準を用いるといくつか違いが見られた。例えば一次無効よりそれ以外の理由で中止になった方がASDAS-IDを達成する可能性が高かった(二次無効 (OR 7.3 [95%CI 1.9; 27.7]), 副作用(OR 9.1 [2.5; 33.3]), 他の理由 (OR 7.7 [1.6; 37.9]))。
結論:axSpAでは一次無効であった場合よりもそれ以外の理由でTNF阻害薬が中止になった場合の方が、スイッチした際の効果が高かった。

脊椎関節炎の関節外症状

SpAを見たら眼・心臓・腹部・爪・陰部の診察をする
視力に注意を払う、ルーチンでの眼科コンサルトは意味ないかも
腸炎症状に注意
定期的なECG、雑音あれば心エコー
 
  1. 炎症反応 
  • 活動性が高くても炎症反応上昇が無い場合もある
  1. 眼病変
  1. 下痢(体重減少)
  • 炎症性腸疾患の既往が無くてもSpA全般に腸炎の合併がみられる
  • 症状の有無に関わらず大腸内視鏡検査をするごく軽度の粘膜炎所見はそれなりに合併している
  • 炎症性腸疾患関連関節炎では非対称性の仙腸関節炎の頻度が高い
  • 炎症性腸疾患関連関節炎の3割で軸関節炎を認め、腸炎に先行することがある
  1. 大動脈弁閉鎖不全症, 房室ブロック
  • 大動脈起始部の付着部炎により房室ブロックやARが見られることがある
  1. 皮膚症状

炎症性腰痛の2009年診断基準

SpA(脊椎関節炎)は血清反応陰性であった場合に関節リウマチの重大な鑑別診断になりますね。そこで参考になるのが炎症性腰痛の病歴です。若くてヘルニアと言われてると1項目満たしちゃいますがどうなんですかね。
  1. 腰痛の発症が40歳以下
  2. 発症が緩徐
  3. 運動で軽快する
  4. 安静で軽快しない
  5. 夜間痛(起き上がると軽快)
4/5で炎症性腰痛 感度77%, 特異度91.7%

ゴリムマブ

特徴
  • トランスジェニック製法により抗製剤抗体ができにくい
  • 52週でMTX併用で0%, 単剤で4%の中和抗体が見られた
  • 二次無効が生じにくい
  • 50mg/4wと100mg/4wの2種類の用法・用量がある
  • 臨床効果は早ければ即日、遅いと4~8週
 
副作用
 
使いにくい患者

生物学的製剤投与時の注意 日本リウマチ学会ガイドラインなど

日本リウマチ学会ガイドラインなど参考にしました

  • 感染症予防と早期治療に備える
  • TNF阻害薬は抗炎症作用と炎症が持続しても骨びらんを抑える作用がある
  • RAの場合インフリキシマブはMTXと併用が必須
  • エタネルセプトやアダリムマブはMTXと併用の必要がない
  • TNF阻害薬は疾患活動性のコントロールが十分につかない場合でも骨びらん抑制作用がある
 
導入する場合、下記3項目を満たすことが望ましい
  • 末梢血白血球数 4000/mm2以上
  • 末梢血リンパ球数 1000/mm2以上
  • βDグルカン陰性
 
 
TNF阻害薬
IL-6阻害薬
アバタセプト
投与禁忌
活動性結核
NYHAⅢ度以上のうっ血性心不全
活動性結核
活動性結核
慎重投与
レントゲンで陳旧性肺結核疑い
QFT/T-SPOT陽性
結核の既往
NYHAⅡ度以下のうっ血性心不全
HBV/HCV感染者
悪性腫瘍の既往、前癌病変
レントゲンで陳旧性肺結核疑い
QFT/T-SPOT陽性
結核の既往
HBV/HCV感染者
悪性腫瘍の既往、前癌病変
レントゲンで陳旧性肺結核疑い
QFT/T-SPOT陽性
結核の既往
HBV/HCV感染者
悪性腫瘍の既往、前癌病変
投与前検査
  • 一般採血, IgG, KL-6, βDグルカン
  • 結核スクリーニング:胸部レントゲン, QFT/T-SPOT/ツ反,
  • 肝炎スクリーニング:HBs抗原, HBc抗体, HBs抗体どちらか陽性ならHBV-DNA, HCV
 
生ワクチン
  • 投与中は禁忌
  • 投与は中止後3~6ヶ月間隔をあける

シュニッツラー症候群

シュニッツラー症候群に関する論文を読みました。一度診断してみたいですね。
 
 
特徴・疫学
  • 世界で300例程度しかない稀な疾患
  • やや男性に多い
  • 平均発症年齢は50歳程度
  • 家族歴や遺伝子異常はない
症状
  • 慢性じんま疹、そう痒感は無いことが多い
  • 発熱、骨髄炎、関節炎を合併する
  • 少数でリンパ節腫脹や肝脾腫を伴う
  • IgM-κ型を主体するM蛋白血症を伴う
診断基準
必須項目
  1. 慢性蕁麻疹
  2. モノクローナIgM/IgG 血症
補助項目
  1. 間歇的発熱
  2. 骨髄炎,骨異常
  3. 真皮内好中球浸潤(皮膚生検)
  4. 白血球や CRP の上昇
確定診断
  1. If IgM,必須項目 2 つと補助項目 2 つ.
  2. If IgG,必須項目 2 つと補助項目 3 つ
鑑別疾患
非常に多岐にわたり困難を極める
CAPSや成人Still病,SLE,蕁麻疹様血管炎等 自己免疫疾患や,悪性リンパ腫,多発性骨髄腫, POEMS症候群(P:polyneuropathy/多発神経炎, O:organomegaly/臓器腫大,E:endocrinopathy/ 内 分 泌 障 害,M:M-protein/M蛋 白,S:skin changes/皮膚症状)等血液悪性腫瘍
治療
  • NSAIDs,コルヒチン,抗ヒスタミン薬等の薬剤が使用されることがあるが,多くの症例で効果は部分的である.
  • 骨痛に対してビスフォスフォネートが使用されること がある.
  • ステロイドについては高用量であれば 有効であるが,感染症を中心とした多彩な副作 用の懸念がある.
  • 最も効果が期待できる薬剤 は,アナキンラやカナキヌマブ等IL-1 の働きを 阻害する生物学的製剤で,投与24時間以内にそ の効果が認められ,最終的には寛解に至る.
  • TCZの有効性も主張されてる。
予後
概ね良好で,生存率は健常人と比較 して変わらないとされているが,一方で,長期的に観察すると,発症 10 年で 15%,15 年で約 20%の患者がマクログロブリン血症やリンパ 形質細胞性リンパ腫等のリンパ増殖性疾患を発 症するため,注意深いフォローアップが必要で ある.また治療が不十分であるとアミロイ ドーシスを引き起こし,心臓,腎臓,消化管等 に臓器合併症を引き起こす.現在のところ,IL-1 阻害薬等の生物学的製剤がリンパ増殖性疾患の 発症を防止するかについては定かでない